2019.05.27シェアオフィス

拡大するシェアリングエコノミーと、ビジネスへの取り込み

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1台の車を複数の利用者で共有するカーシェアのように、モノやサービス、場所などを共有・共用する「シェアリングエコノミー」の仕組みが拡大しつつあります。そうした背景から、これまで安定的な需給関係があった既存のビジネス領域も、シェアリングエコノミーの影響によって利益損失を受けないとも限りません。まずはシェアリングエコノミーについて理解し、積極的にビジネスとして取り入れる戦略を考えてみましょう。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、モノやサービス、場所などを個人で占有するのではなく、多くの人と共有したり交換したりして利用するという社会的なサービスです。例えば、1台の車を複数の利用者で共同利用するカーシェアリングの例が、分かりやすいかもしれません。

これまで車を利用するためには、個人で購入して所有者となるか、短期間の利用に合わせてレンタカーを使うといった方法が主流でした。しかし、はじめから共同利用を前提としたサービスが提供されたことで、個々の管理負担を減らし、社会的にもメリットのある仕組みができ上がっています。そうしたサービス形態が発展して、空き部屋や駐車場のような不動産物件を特定の期間だけ一時的に貸し出すことや、クラウドファンディングのように起業やプロジェクトの目的とその資金負担を共有することなども、シェアリングエコノミーの一部として扱われています。

シェアリングエコノミーの可能性

調査会社の矢野経済研究所によると、2016年度のシェアリングエコノミーサービス市場は約539億円でしたが、2022年には約1,386億円にまで拡大し、その年平均成長率は17.0%になると見込まれています。経済の低成長が懸念される現代において、20%近い年平均成長率は、今後の市場拡大が期待される分野と言えます。

※シェアリングエコノミー市場の定義:不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネなどを共有できる場を提供するサービス、そのマッチング手数料や販売手数料、月会費、その他サービス収入などのサービス提供事業者の売上高。

拡大しつつあるシェアリングエコノミーの考え方

では、具体的にどのようなものが共有・共用(シェア)されているのでしょうか。

シェアリングエコノミーの対象領域

総務省の「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年度)によると、主なシェアリングエコノミーの対象とその代表的なサービス名は、次のようになります。

  • 空間
    空き家や別荘、駐車場等の空間をシェア。Airbnb、SPACEMARKET、akippa
  • 移動
    自家用車の相乗りや貸自転車サービス等、移動手段をシェアする。UBER、notteco、Anyca、Lyft、滴滴出行。
  • モノ
    不用品や今は使っていないものをシェアする。Mercari、ジモティー、airCloset
  • スキル
    空いている時間やタスクをシェアし、解決できるスキルを持つ人が解決する。CrowdWorks、アズママ、TIME TICKET。
  • お金
    サービス参加者がほかの人々や組織、あるプロジェクトに金銭を貸し出す。Makuake、Ready For、Crowd Realty。

※参考:シェアリングエコノミーの持つ可能性「平成30年版情報通信白書」|総務省

シェアリングエコノミーでビジネスに変化も

これまでの常識であった「車や服は所有するものであり、古いものは捨てて新しいものに買い替える」という考え方から、少しずつ「利用するために借りる」という思考に変化している層が増えています。
以前より、一定の期間で賃借する「レンタル」商品はあったものの、サービスや取扱品などが限定されていたり、条件によって割高になったりすることがあり、エコロジカル(環境保全に役立つ、もしくは金銭的な負担が減る)という点では、やや異なるものでした。

シェアリングでは、ランニングコストを複数の利用者でシェアできるため、利用者1人当たりの負担を減らし、レンタルよりもさらに気軽に活用できる仕組みが整っています。「個人で所有するほどではないが、レンタルで毎回借りると高くつく」という悩みを抱えた利用者層への市場開拓に成功していると言えるでしょう。

シェアリングエコノミーは、利用価値に合わせた顧客満足度に焦点を当てたビジネス展開と言え、従来のような、製品やサービスの機能や効用の向上を重視する視点とは異なるものです。つまり、お客様のニーズに沿ったサービスであり、この考え方は、今後も多くの商材に拡大していくことが予想できます。将来的な市場拡大に向けて、積極的に対応できれば、新しい顧客層の取り込みに成功できる可能性が高まるのではないでしょうか。

シェアリングエコノミーへの対応とその取り込み

事業としてシェアリングを活用したビジネス展開を考えるだけでなく、自社の利益拡大につながるツールのひとつとしてシェアリングの考え方を活用することを検討してみましょう。

シェアリングエコノミー時代のオフィスワークを考える

シェアリングサービスの供給事業者にならなくても、自社のビジネスにシェアリングエコノミーを導入するのは、価値のあることです。利用側として、「所有による無駄を減らす」効果と、「導入したいがコスト的に難しいもの」へのチャレンジという、2つの側面で価値が得られます。前者はコスト削減、後者は新規事業への低コスト・リスクでの着手となるでしょう。商用車のシェアやサービス拠点の共用、物流ルートの相乗りなどが該当します。

場所(オフィス)のシェアという考え方

オフィスという「場所」のシェアも可能です。ひとつのオフィスビルに対して、複数の会社がそれぞれフロアや部屋ごとに契約しており、ある意味、同じオフィスビルをシェアしているとも言えます。これがさらにシェアリングエコノミーの形で提供されているのが、レンタルオフィスやシェアオフィスです。

賃貸料が高額な都内の一等地を利用したいと思っても、1社ではコスト的に厳しい場合があるでしょう。しかし、レンタルオフィスやシェアオフィスであれば、立地の良い場所であっても、比較的少ない利用料で、希望のエリアにオフィスを構えることも可能です。また、本社から離れた場所に新たに支店や営業所を出すかどうかを検討する際にも、シェアオフィスを利用するのもよいでしょう。例えば、東京の会社が他府県に営業を広げる場合、最初から支店や営業所を開設するのは大きな負担です。初期コストを回収するまでに、時間がかかってしまうかもしれません。その点、レンタルオフィスやシェアオフィスなら、進出前の情報収集やテストマーケティングの段階から、その目的とする地域で早期の活動が可能です。

こうした活用法は、地方にある企業が、東京や大阪、名古屋などの大都市圏に進出したい場合にも当てはまります。むしろ大都市圏には多くのシェアオフィス等があり、ビジネス拠点として有利な面もあります。サービスの多さや、ランドマーク、交通のターミナルとなる要所に利用できるといったメリットがあり、新たな市場を獲得するためのあと押しになるでしょう。

時代の流れをとらえる

シェアリングエコノミーの考え方は、時代の流れから必然的に発生したとも言えます。こうしたサービスは価格破壊やサービスデフレを推進する元凶のようなとらえ方をされることもありますが、「所有のみによる無駄の削減」と「購入できないものを利用する」という2つの価値があることは上述した通りです。

シェアリングされているサービスを広く見渡し、自分の会社のビジネスにとって、どんなふうにプラス利用できるかを考えることも、次世代の市場獲得に向けた戦略のひとつ。まずは、利用者側としてレンタルオフィスやシェアオフィスを活用しながら、新たなビジネスの形を考えてみてはいかがでしょうか。

参考:

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+OURS(プラスアワーズ)編集部

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