グローバル化に伴い、企業は激しい競争にさらされています。そうした環境のなかで注目されているのが、オープンイノベーションです。異業種とのコミュニケーションがカギとなる「オープンイノベーション」において、さらなる活用を期待されているのが、コワーキングスペースでしょう。オープンイノベーションを実現するうえでの課題と、コワーキングスペースの活用法について詳しく解説します。
オープンイノベーションとは
そもそもオープンイノベーションとはどのようなものなのか、言葉の定義や本質的な役割について確認してみましょう。
オープンイノベーションの定義
オープンイノベーションとは「外部企業と協業しながら、新たな技術なども組み合わせてサービスや商品を開発すること」を指します。ここで指す外部企業とは、同業他社や異業種企業だけでなく、大学や研究機関なども含まれます。
従来、自社内でのみ開発を行う「クローズドイノベーション」が主流でした。クローズドイノベーションは自社独自のノウハウが蓄積でき、企業の成長につながるというメリットがありますが、一方で、社内の限られたノウハウや知見に頼らざるを得ず、開発スピードが遅くなりがちなデメリットもあります。そうした状況の対極にあるのがオープンイノベーションです。
現在のように経済のグローバル化が進み、驚異的な速度でテクノロジーが進化し続ける環境においては、クローズドイノベーションだけに頼っていては競争に取り残されてしまいます。自社以外の企業や関係機関と連携するオープンイノベーションを活用することによって、自社のみで開発を進めるよりも、よりスピーディーな事業展開が可能になります。
オープンイノベーションは社会全体にとっても有益
これまでのクローズドイノベーションとは異なり、オープンイノベーションの活用で外部の企業や研究機関などが持っている技術を得られ、自社のノウハウや知見と合わせることによって開発力は飛躍的に向上します。また、開発にかかるリソースを複数の企業で分担することによって、開発コストや製造コストの圧縮も可能になるという大きなメリットがあります。
こうした背景から考えても、これまでの競争環境においては常識とされていたクローズドイノベーションの概念を180度転換した新しい発想が「オープンイノベーション」にあります。
また、オープンイノベーションは企業そのものの成長はもちろんですが、技術革新の速度がアップすることによって社会的課題の早期解決にも役立つことが期待されます。例えば自動車とITの融合によって生まれる自動運転技術は交通事故を減少させ、医療とAI・ロボットが融合することで、難病の治療や高度な手術も容易になるでしょう。
オープンイノベーションは一企業や特定の団体にのみ利益がもたらされるものではなく、社会全体を俯瞰して見たときにその真の価値が発揮されます。欧州委員会(EC)においては、企業間が1対1で連携し新規事業の創出や開発効率向上を目指すことを「オープンイノベーション1.0」、社会的な課題の解決に向けて取り組むことを「オープンイノベーション2.0」と定義しています。企業成長だけでなく、社会貢献のうえでもオープンイノベーションにはメリットがあるでしょう。
オープンイノベーションを実現するうえでの課題
2016年の「オープンイノベーション白書」によると、半数以上となる53%の企業がオープンイノベーションの取り組みを一度も実施したことがないと回答しています。実際のところ、オープンイノベーションを実現するうえで解決しなければならない課題が山積しているのも事実です。
最も大きな課題として挙げられるのは、協業する相手とのマッチングでしょう。オープンイノベーションで最も重要になるのは外部企業との協業体制です。新たなビジネスアイデアを事業にしたいと考えたとき、どの企業や大学、研究機関と手を組むのかによって得られる技術も変わってきます。
例えばアパレル製品を製造しているメーカーが、AR/VR技術を活用して自社の製品の着用姿をチェックできるアプリを開発したいと考えたとします。このとき、スマホアプリを開発できるベンダーであればどこでもよいというわけではなく、ARやVR技術に強いベンダーを探す必要があります。
ARやVR技術に限らず、これまでどの企業も実用化できていないアイデアを実現したいのであれば、その技術を研究している大学や研究機関との協業を検討する必要もあるでしょう。しかし、そうした相手とコンタクトを取りたくても、気軽に相談できる場所やチャンスがなければ、お互いのスケジュールを合わせることさえ容易ではありません。
オープンイノベーションを期待するアイデアがあっても、それに協力してくれる会社をマッチングする場所や機会が十分に提供されていなければ実現できないというのが大きな課題です。言い方を変えれば、場所や時間の制約によって企業同士のコミュニケーションが不足し、それがオープンイノベーションを阻害している大きな要因になっていると言えるかもしれません。
こうした課題をクリアしたうえで、オープンイノベーションが活発化する場をできるだけ多く設けることが企業と社会が成長する第一歩と言えるでしょう。
オープンイノベーションの実現に有効なコワーキングスペース
上述したような課題を解決するためには、企業同士がマッチングできる機会や場所の提供が必要です。そこで注目されているのが、コワーキングスペースの活用。まずはコワーキングスペースという仕組みの理解を深めながら、オープンイノベーションに有効である理由について考えてみましょう。
コワーキングスペースにはさまざまな企業が集まる
コワーキングスペースとは「不特定多数の人が共同で仕事をする場所」のこと。似たような役割を持つ場所としてシェアオフィスがあります。しかし、シェアオフィスは、その名のとおり、ひとつのオフィスを共同で利用し、作業をするためのスペースとして活用されるのに対し、コワーキングスペースはコミュニケーションを取りながら作業もできるスペースであるという特徴があります。
異業種間での活発なコミュニケーションが生まれる
コワーキングスペースでは、さまざまな業種の人が同じ空間に集まっているため、異業種との出会いのチャンスが生まれます。互いのコミュニケーションによって、ビジネスのイノベーションが起こり、オープンイノベーションが活発化されます。いわばコワーキングスペースという場所はビジネスイノベーションの源泉と言えるかもしれません。
従来のような自社専用のオフィスはセキュリティが高く、クローズドイノベーションには最適な環境です。しかし、オープンイノベーションを期待するのであれば、不特定多数の企業や機関とのコミュニケーションができるコワーキングスペースのような環境が適しています。
上述した「オープンイノベーション白書」内でのアンケート統計では、外部連携の相手先を見つけるために71.2%の企業が展示会等を利用し、続いて51.8%の企業が論文や学会情報を参考にしているとの結果が出ています。いずれも協業相手を探す方法として間違いはありませんが、対象となる企業や機関を探し出すのに、時間やコストがかかってしまうことがほとんどです。
よりカジュアルに、リラックスした空間のなかでコミュニケーションが取れれば、革新的なアイデアも生まれやすくなるはずです。本当に価値の高いビジネスイノベーションを生み出すためにも、コワーキングスペースは貴重な環境と言えるでしょう。
グローバル化社会で求められるオープンイノベーション
グローバル化のなか、激しい企業間競争を生き残っていくためにはオープンイノベーションが必要不可欠です。従来のクローズドイノベーションではなく、異業種間で活発なコミュニケーションを取りながらオープンイノベーションを実現する場として、コワーキングスペースの活用が注目されています。新規事業の創出や新たなビジネスアイデアのヒントを求めているのであれば、コワーキングスペースの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
+OURS(プラスアワーズ)編集部
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