起業して会社を設立したからといって、利益が順調に伸びるとは限りません。開業後においても顧客の確保をはじめ、資金繰りや人脈づくりなどさまざまな課題があり、不安を感じることもあるでしょう。安定した会社運営を続けるためには入念な起業準備が必要であり、同時に、仕事がしやすい環境づくりを意識したオフィス選びが大切です。
今回は、安心して事業をスタートするために準備しておくべきことに加え、起業時に役立つシェアオフィスの活用法を紹介しましょう。
会社を設立して起業するための事務手続き
事業を始める際には、個人で開業する個人事業主と、会社を設立し法人として起業するケースのどちらかになります。個人起業であれば、税務署に開業届を提出するだけで問題ありませんが、法人化して会社を設立する場合はさまざまな事務手続きが必要です。必要な書類や取締役、資本金などについての細かな法律が決まっているため、事前に確認しておきましょう。
必要な書類の準備
株式会社を設立するためには、「登記申請書」「登録免許税納付用台紙」「定款」「発起人の決定書」「役員の就任承諾書」「取締役の印鑑証明書」「資本金の払込証明書」「印鑑届出書」などの書類を提出する必要があります。法務局のホームページでほとんどのテンプレートが公開されており、入手は簡単です。
上述した書類のなかには、取締役や監査役に関するものがありますが、個人事業として代表取締役1名で法人化することも可能です。ただし、複数の役員が存在する方が社会的に信用を得やすい傾向があります。
また、資本金については、2006年から施行された新会社法によって資本金1円から法人化できるようになっています。ただし、業種によっては許認可を受けるための最低資本金額が決まっている場合があるため、必要最低限の金額があるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
ただし、こうした書類を作成するためには、会社の所在地が確定している必要があります。
登記住所にシェアオフィスを活用する
繰り返しますが、登記を行う際には、会社の所在地である「本店所在地」を決めておかなければいけません。スタートアップ企業の場合には、自宅を登記住所として申請することも可能ですが、賃貸の場合は注意が必要です。一般的なアパートやマンションなどは、事業所としての利用を不可とする契約を結んでいるケースも多く、無許可で登記してしまうとトラブルに発展する可能性もあります。
とは言え、別にオフィスを借りるとなるとコストがかかり、開業時の資金も多く必要になります。できるだけコストを抑えたい場合に、登記住所として利用できるのがシェアオフィスです。シェアオフィスの多くは登記住所として申請できるようになっているため、最小限のコストで登記住所を取得することができます。限られた開業資金のなかで、より良い選択肢としてシェアオフィスを活用するのもひとつの方法です。
安定的な起業に向けて準備しておきたいこと
会社設立のために必要なのは事務的な手続きだけではありません。将来的に利益を確保し、安定した企業運営を目指すためにも、まずは人脈づくりや資金面に関する準備も行っておきましょう。
人とのつながりを作っておく
起業後の事業を発展させるために欠かせないのが、「人脈」です。前職で関わった同僚や上司をはじめ、取引先やプライベートな知人・友人など、あらゆるネットワークを駆使して営業活動を行うことになるでしょう。同業者に限らず、他業種の人とつながることによって多様なネットワークが構築でき、ビジネスチャンスも広がります。
シェアオフィスを活用して異業種の人との交流機会を持つ
開業に向けて、名刺交換会といった交流会に参加することを考える方も多いことでしょう。異業種の人と交流したり意見交換をしたりするなかで、新たなビジネスアイデアを発見し、協業に発展するチャンスもあります。
しかし、そうした交流会に参加するためには、費用がかかることも多く、またタイミングによっては参加できないこともあるでしょう。その点、登記住所としてシェアオフィスを利用している場合には、仕事をしながらでも幅広い業種の人と交流できる機会があり、活発な意見交換が可能です。さまざまな起業家が集まるシェアオフィスならではの特権であり、気軽にコミュニケーションできるというメリットもあります。
特別な場所に赴いて交流することも良い経験になりますが、同じ起業仲間が集まるシェアオフィスであれば、お互いの仕事環境を間近に見ながら、隣で頑張る仲間の姿が目に入るため、個々の交流を超えたビジネス面での刺激も受けられます。
資金調達方法を検討する
長期的な事業計画を実施するうえで、資金調達は大きな課題となります。ひと口に資金調達といっても、公的融資や銀行融資を利用したり、クラウドファンディングを活用したりと、さまざまな方法があります。
なかでもスタートアップ企業が活用したいのが、ベンチャーキャピタルからの支援でしょう。成長途上の企業に対して積極的な投資を行うとともに、経営的なアドバイスを与えてくれるベンチャーキャピタルは、創業間もないスタートアップ企業にとって心強い存在です。すでに支援を受けている起業仲間がいれば、投資が得られた条件や手続きなどについて、相談してみるのもよいでしょう。
創業時点で資金計画を立てておく
開業時には好スタートだと感じても、創業時の資金計画が誤っていると、その後の事業計画に大きな影響を与えてしまいます。起業準備として資金計画を行う際には、以下のような点に注意しましょう。
スタート時点では多額の設備投資を行わない
創業間もない時期から安定的な売り上げを維持できるとは限りません。資金が潤沢ではないうちに多額の設備投資を行うと資金繰りが悪化するリスクがあるため、スタートアップ時にはできるだけ最小限の設備投資を心掛けるべきでしょう。
特に毎月の固定費として発生するオフィスの賃貸料は大きな課題。利便性が高いテナントは賃料が高くなりやすく、かといって交通の便が悪い場所では営業活動もしづらい傾向にあります。低コストで立地の良いオフィスを選ぶ際にも、シェアオフィスの活用を考えてみましょう。
万が一の撤退基準も検討しておく
十分な勝算があって起業した場合であっても、業績が伸び悩むことがあり得ます。リスクが膨らみすぎてしまうと、仕事だけでなく人生そのものを左右しかねません。リスクを負ってでも事業を継続するという選択肢だけでなく、万が一のときには事業の撤退を視野に入れられる勇気も大切でしょう。
しかし、実際にそうした状況に遭遇したときには、冷静な判断ができない可能性もあります。起業準備としては苦痛な作業ですが、将来的な選択肢として撤退を決める判断基準を考えておくとよいでしょう。こうした可能性を考慮する場合にも、メリットが多いのがシェアオフィスの利用です。万が一事業を撤退する場合でも、シェアオフィスであれば移転手続きが比較的容易であり、フレキシブルに対応できるでしょう。
もちろん、業績が順調に上がり、従業員を増やしたり、設備を拡大させたりする際にも、シェアオフィスであれば移転コストが軽減できるという利点もあります。
いずれにしても創業間もないスタートアップ企業は、短期間で会社の状況が変化しやすいものです。状況に応じて柔軟な対応ができるシェアオフィスは、起業家の強い味方です。
最後に
起業の際には事務的な手続きだけではなく、実務面や人的交流、資金面など幅広い準備が必要となります。低コストで登記住所として利用でき、起業仲間同士で切磋琢磨できるシェアオフィスの利用は、ビジネスチャンスを広げることにもつながります。
事業を運営していくうえで大切な「人脈づくり」と「コスト軽減」に役立つシェアオフィス。希望を持ってスタートする起業準備の第一歩として、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
+OURS(プラスアワーズ)編集部
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