「副業」というと収入面をカバーするためのちょっとした仕事というイメージがあるかもしれません。しかし、実際には、副業型のフリーランサーとして専門技術で社会や企業に貢献している人も多く存在しています。
近年、政府による「働き方改革」の取り組みが進むなか、副業を解禁する企業が増えたことで、実際に自分自身も副業を始めてみたいと考えている人が増えています。取り組むからには、将来へのスキルアップも兼ねた目標設定で副業に臨みたいもの。本業とは違う新たな気持ちで副業に取り組むからこそ利用してみたいのが、近年サービスが豊富になったシェアオフィスやコワーキングスペースです。
なぜいま副業が注目されるのか?
「副業」という言葉は、あくまでサブ的な印象がありますが、現状そうした表現が当てはまらなくなりつつあります。その理由として次のようなものが挙げられます。
フリーランサー人口の増加と経済成長
米国にあるフリーランサーユニオン(フリーランサーのための労働組合)が2018年に行った実態調査によると、2014年には5,300万人だったフリーランサー人口は、2018年には5,670万人に到達したとのこと。4年間で370万人が増加し、今や労働者の3人に1人、35%に当たる労働人口がフリーランサーであることがわかっています。
また、その勤務形態や仕事の発注者との業務関係もさまざまであり、同調査では、独立してプロジェクトごとに契約をする独立受託型が40%、特定の企業に勤務しながら副業として空き時間にフリーランサーとして働く形態が27%と報告しています。どちらも専門的な能力を活かし、社会や企業に貢献しているようです。
日本もフリーランサーに期待か
国内大手のクラウドソーシング会社であるランサーズ株式会社の調査「フリーランス実態調査2018年版」では、日本でもフリーランスの経済規模は20兆円を超え、副業の経済規模は8兆円規模へ拡大したとしています。フリーランサーが受ける仕事は、納期のある独立した案件というイメージがありますが、仕事の一部を担うような副業型の業務受発注規模も、今後は増加していくのかもしれません。
副業の思いがけない効果
実際に副業を始めてみると、労働の対価となる金銭の獲得だけではなく、将来に向けての投資にもつながることにも気づくでしょう。
起業の準備やプチ起業として
副業は収入アップになるだけでなく、自分のスキルを社会に活かしたい、役立てたい、試したいという人にとってもチャレンジしがいのある働き方です。仕事や技術の多くは、経験の積み重ねより成り立ちます。希望する業種に就業できなくても、副業で同じ経験を獲得することが可能です。
さらに将来的な独立を目指して、受注体制を構築したり、スキルをアピールしたりする方法として週末起業をスタートさせるという選択肢もあるでしょう。今の仕事を辞めて、いきなりフリーランスや起業家として独立してしまうと、収入面が安定していないといったリスクもあります。しかし、今の仕事を続けながら週末起業家になり、少しずつ仕事を請けるようにすれば、準備期間も確保でき、リスクの軽減に役立ちます。
仲間を募って新しいコミュニティ
新たな出会いにつながるのも、副業の魅力です。将来的な独立に向けての下準備として副業をスタートする場合には、その期間のうちに築いた人脈が、今後の業績を左右する大切な資産になるかもしれません。場合によっては、さまざまな業種の人とコミュニティを作り、新たなビジネスプランをスタートすることも可能でしょう。企業に勤務しながら副業を始める人にとっては、家庭や地域、会社といった身近なところとは違う、第3のコミュニティで活動することで、新たな刺激を受けるチャンスが広がります。
副業の時間、場所の確保にも付加価値を
副業や週末起業を始めようと思ったとき、課題となるのが仕事場の設定です。
日本の住宅事情と副業
在宅で副業の仕事ができればいいのですが、残念ながら必ずしも良い作業環境が整うとは限りません。自宅内で仕事部屋を持てない、集中できないといった状況にある場合、外出先で作業したほうが効率がよいでしょう。とはいえ、仕事のたびにカフェに出向けばその分のお金がかかり、ネット環境が不安定になってしまう可能性もあります。また、騒がしい店内では、かえって集中しづらいことも考えられます。無料で使える公的な図書館もありますが、日によって空席状況が違ったり、長時間の席利用ができなかったりして、定期的に利用するのは難しいかもしれません。しかし、テナントオフィスを契約するとなると、コストがかかります。よって、できるだけ手軽に利用できる専門のスペースを探したいのが正直なところです。そこで検討したいのが、レンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースの利用です。
レンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースの有用性
できるだけコストをかけずに落ち着いて働ける場所であり、同時に事業の拠点として活用できるのがレンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースです。それぞれの特徴を知り、自分に合った場所を探してみましょう。
- レンタルオフィス
レンタルオフィスは、隣のオフィスとは壁やパーテーションで区切られている完全独立型のオフィススペースです。レンタル料金は1人用の小スペースタイプでも月額5万円を超えるケースが一般的。どちらかといえば、副業やフリーランサーよりも、1~2名の社員がいたり、複数人で共同経営を行うような事業を立ち上げるときの利用に向いています。 - シェアオフィス
他の利用者とスペースを共有し、フリーアドレス形式でデスクをレンタルするようなスタイルが、シェアオフィスです。レンタルオフィスのように個別の占有スペースが確保されるわけではないため、書類等の保管スペースが必要な場合には、別途ロッカー等を借りることになります。利用料金はおおむね、レンタルオフィスの2分の1から4分の1程度で、立地や利用できる設備などによって変わります。省スペースではありますが、仕事環境を確保できるため、起業したばかりの会社や独立型のフリーランサーにおすすめです。 - コワーキングスペース
コワーキングスペースの利用形態は、シェアオフィスとほぼ同じです。フリーアドレスでひとつのスペースを複数の人と共有して利用します。シェアオフィスはその名のとおり、仕事場であるオフィスの要素が強いものですが、コワーキングスペースは利用者同士の交流場所として活用されるケースが多いようです。コミュニティの形成が行いやすく、気軽に立ち寄れる印象があります。人通りの多いにぎやかなエリアに立地することが多いため、利用料金はシェアオフィスよりも高くなる場合もあります。
利用時間は昼間の時間帯や、そのサービスが夜までの時間帯ならば、仕事帰りに利用することも可能です。土日もサービスを提供していれば、週末の多くの時間を副業のために使うことができます。
情報交換の場所
仕事仲間が集まって打ち合わせをしたり、同じシェアオフィスやコワーキングスペースの利用者との間で交流をしたりできるのも、こうしたスペースの特徴です。情報交換はもちろんのこと、オフタイムを一緒に楽しんだり、お互いの不足部分を補うように仕事やスキルを交換したりできる機会が増えるでしょう。コワーキングスペースやシェアオフィスのサービス会社が、定期的に利用者間での交流を深めるイベントを開催していることも多く、ネットワークづくりにも役立ちます。
「副業」から起業準備へ
副業や起業時の初期費用はできるだけ抑えておきたいものです。シェアオフィスやコワーキングスペースであれば、比較的安価な料金で利用できるのがうれしいところ。本格的な起業に向けて、名刺に記載するオフィスの住所や登記場所の確保にもぴったりです。事業が拡大し、安定したあとは本格的なオフィス契約を行えばよいでしょう。まずは、事業の拠点となるスペースを確保し、無理なく作業が行えるように働く環境を整えてみましょう。
参考:
- 3人に1人がフリーランスの米国! 最新フリーランス事情〜前編|Rhythmoon
- Freelancing in America:2018 P11
- フリーランス実態調査2018年版を発表|ランサーズ株式会社
- 「副業解禁」で壊れる日本の「カイシャ」|日経ビジネス
- 副業・兼業|厚生労働省
- 副業で成功するために、時間と場所をどう確保するか|DIAMOND Online
- 今おすすめの副業は? | 副業の実態と成功させるためのポイントについて解説|BOXIL
- |Worker’s Resort
+OURS(プラスアワーズ)編集部
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